バイクや車を所有していれば定期的に必ず行わなくてはならないのが「オイル交換」。
特にホンダやヤマハ等の日本メーカーのバイクに比べ、エンジンやミッション系が繊細な構造となったハーレーダビッドソン製のバイクは、抜かりなくオイル交換をしておきたいですね。
そこで今回は、私の所有するIron(アイアン)を題材に、エンジンオイルとプライマリー(ギア)オイルの交換方法をシェアします。
XL883Nを使って説明しますが、同じスポーツスターファミリーのXL1200NSやXL1200Xも工程やパーツは同一です。フォーティエイトや1200アイアン乗りの方も是非参考にして下さい。
尚、私自身がハーレーの整備を初めて行う際に調べてもあまりいい情報が無かったので、オイル交換で必要となるおすすめの消耗品情報についても詳しくシェアしますね!
なお兄にとってのバイク整備
私自身、これまでに20台ほどのバイクを所有してきました。新車購入時の初回無料点検以外は、全て自らの手でオイル交換を行っています。
車に関しても同様に自分でオイル交換をしてきました。車の場合、ジャッキアップしてエンジンの下に潜り込まなくてはならないので、バイクとは比較にならないくらい面倒で、かつ場所が必要になります。
それ以外の基本的なメンテナンスやカスタム等に関してもほぼ自身の手で行っており、バイクショップにお願いしたことのある作業は、記憶を辿ってみても、タイヤ交換とドライブベルト交換、ホイールベアリング交換にカムチェーンテンショナー交換くらいだと思います。
セルフオイル交換のすすめ
車と違いバイクのオイル交換は、作業スペースが広くなくてもできますし、専門知識もほぼ必要ありません。加えて、専門工具やジャッキ等の大掛かりな装置も要りません。
ライコランドやナップス、2りんかん等のバイク用品店であれば、ハーレーであっても1カ所に付き1,500円ほどの工賃で対応してくれますが、特に今回ご紹介するスポーツスターのエンジンオイル交換は、最低でもマイナスドライバー一本とオイル受けさえあれば完了できるので、自分で行うことをおすすめします。
多少ですが出費も抑えられますし、何より自分で整備することでよりバイクに愛着が沸きますよ!
今回は、自らの手でハーレー・スポーツスターのオイル交換を初めて行う方向けに、その手法とコツ、必要となるオイルやパーツ類をご案内します。
スポーツスターのオイル交換概要、頻度について
今回交換するのは、エンジン内部の潤滑油であり冷却作用がある最も重要なエンジンオイルと、ミッションを潤滑させるプライマリーオイルの2種類です。
下記は、スポーツスターのオイル交換を行う際に必要となる最低限の知識です。
オイル交換と一口に言っても、交換対象となる部分は大きく分けて以下の3つあります。
交換頻度に関してはあくまで目安ですが、スポーツスターのエンジンは空冷でオイルに負荷がかかりやすいので、エンジンオイルは最低でも走行距離5000㎞で変えたほうがいいです。
①エンジンオイル
エンジン保護の為のオイル。私がXL883Nで使用している一押しのオイルは後ほど詳細を記述します
交換サイクル: 3000km~5000㎞毎、又は、乗らなくても半年での交換がおすすめ
※3000kmから5000㎞と交換サイクルに開きがありますが、これはオイルの性能により推薦交換時期に違いがある為です。
レブテック等の鉱物油なら3000km、ハーレー純正のシンスリーのような100%化学合成なら5000㎞を目安にすると良いでしょう。
気温が15℃から20℃前後の春と秋はエンジンオイルにとって好ましい環境ですが、気温が30℃を超す夏季や、10℃を下回る冬季はオイルが劣化しやすくなります。
特に、気温が5℃以下の時にハーレーを20㎞前後の短距離で乗車することが頻繁にある場合は、エンジンに害のあるスラッジの発生が多くなる為、エンジンオイルの交換サイクルを2000km程度に短縮したほうが良いでしょう
②エンジンオイルフィルター
エンジン内で発生する不純物を濾過する為のもの
交換サイクル: 6000㎞~10000kmで交換
③プライマリーオイル (ギアオイルやミッションオイルと明記されることも)
交換サイクル: 5000㎞~8000㎞毎に交換 ※オイル性能により変動
尚、スポーツスターにも適合するハーレー純正のプライマリーオイル「フォーミュラープラス」は、他社のオイルより倍以上高寿命とされ、メーカーでは16000㎞を交換時期としています。
但し、それはあくまで米国での推薦交換時期であり、信号が多く寒暖の差も激しい日本では遅くとも10000㎞程度で交換しておいた方が良いでしょう。
Heavy Synthetic Gear Oil(商品番号: 62600094)
このオイルはグレードが「80W-140」ととても粘度が高く、ベースの化学合成油と添加剤の力で劣化しにくいのが特徴です。
なお兄が実際に使った感想としては、今までのオイルは何だったのか…と思えるくらいプライマリーからのノイズが消え、ギヤもスムーズに入るようになりました。
特に、発進時にニュートラルから1速に入れた時の「ガチャン」という不快音が減少したのが良かったですね!
ちなみに、前回10000㎞でこのオイルを交換したのですが、粘度低下や汚れはほぼ見られなかったので、次回は15000㎞以上走ってから交換する予定です。
パワーがあってクラッチ板の寿命が短いとされるフォーティエイト等の1200㏄のスポーツスターにとっては新たなスタンダードと言えるでしょう!
スポーツスターの場合はハーレーの他のファミリーとは異なり、交換が必要なオイルは2種類です。
因みに、所謂ビッグツイン系のエンジンは3種類、V-RODの水冷エンジンは1種類のオイルが必要です。
絶対知っておきたい、オイル交換時の注意点
オイル交換でとても重要な点は、正しい油量を入れるということです。
オイル量が少ないとエンジンを保護・冷却する効果が弱まってしまい、エンジンを痛める可能性があります。
逆に、多く入れ過ぎるとエンジン上部のロッカーカバー周辺等からオイル漏れを起こし、最悪エンジンを壊してしまう可能性があります。
オイル交換の際は、規定量を入れたからといって、オイルゲージでの油量確認を怠ってはいけません。
XL883NやXL1200X、XL1200NSなどの高年式車両は、オイルレベルゲージの確認時はサイドスタンドをかけた状態で油量を量ります。
リジスポとは油量の量り方が違う!
因みに、2003年までの古いスポーツスターの場合は、油量を量る際は車体を垂直にすることを忘れずに。
初心者によくあるミスとして、スタンドを掛けた斜めの状態でゲージを確認しオイルを入れすぎてしまう、という初歩的なミスが後を絶ちません。
ハーレーのエンジンはデリケートなので、少し量を多めに入れただけでもオイル漏れを起こす場合があります。
「スポーツスターでオイルゲージを確認する時はサイドスタンドを掛けて車体を斜めの状態で行う」などといった勘違い情報を発信しているブログやYouTubeが散見されますが、
高年式車両は確かに車体を斜めにして量りますが、リジスポと言われる2000年以前の車両は、ゲージ確認時は車体を垂直にした状態で行う必要があります。
オイル交換時に使用する工具類
全般
必ず必要となるもの
・オイル受け (ポイパックなどのオイル廃棄用の箱)
・ウエス (専用品でなくてもボロ布やキッチンペーパーでも可)
・ゴム手袋
あると便利なもの
・パーツクリーナー
おすすめはプラスチックにも使える「KURE パーツクリーナー」
・オイルジョッキ
エンジンオイル交換の場合
・マイナスドライバー
エンジンオイル交換だけを行うのであれば、マイナスドライバーのみでOKです。
エンジンオイルフィルター交換の場合
・フィルターレンチ (※手で回らなければ必要)
私は「KIJIMA オイルフィルターレンチ」を使用
・1.5Lの空のペットボトルを加工して作ったオイル受け
プライマリーオイル交換の場合
・六角棒スパナ、又は、5/8インチのレンチ
・オイルノズル
・トルクス (ダービーカバーを開ける場合)
使用するオイルの量
エンジンオイル
・フィルターを変えずに行う場合、1.9L (標準サイズのボトル約2本分) ※オイルの抜け具合により変動するので要ゲージ確認
・フィルターを交換する場合、2.7L (ボトル2.8本)
プライマリーオイル
950ML (ボトル約1本)
使用するエンジンオイル・フィルター
スポーツスターのエンジンオイルは、以下のいずれかがおすすめです。
特に拘りが無ければ、ハーレー用として製造されているレブテックやDS製のオイルで品質的に問題ありませんが、
愛車を長く大切に乗りたい方には、やはりハーレー純正商品の「SYN3」または「H-D360 20W50」がおすすめです。
因みに、Amazonなら化学合成のSYN3と鉱物油のH-D360の値段がほとんど変わらないので、毎回私はSYN3を購入し使ってます。
以下商品は、ほぼ同様のパッケージであっても適合しないものが多いので、リンク先からの購入がおすすめです。
・いろいろ使いましたが最もおすすめ!100%化学合成オイル
SYN3(シンスリー) 20W50
・純正。人気があり私的にも一押し
H-D360 純正オイル 20W50
上にない場合はこちらから
・鉱物油の代表格
レブテック エンジンオイル 20W50 (商品番号: 003074)
・最近のなお兄の一押しオイル
ツインパワー プレミアムエンジンオイル 20W-50
エンジンオイルフィルター
■圧倒的な信頼の純正品
ハーレー純正オイルフィルター (商品番号: 63805-80A)
■高品質かつ手頃でおすすめ
キジマ マグネットイン オイルフィルター ブラック (商品番号: HD-08705)
プライマリーオイル交換時に必要なアイテム
・最近のなお兄の大のお気に入り
1万キロ以上余裕で持つ耐劣化性なので、交換サイクルが少なくて済み経済的!
ヘビーシンセティック・ギヤオイル (商品番号: 62600094)
・プライマリーオイルの大定番!純正はこちら
ハーレーダビッドソン トランスミッションオイル FORMULA+ (商品番号: 62600033 )
・安価な鉱物油
レブテック XLトランスミッションオイル (商品番号: 003077)
▼以下は交換の度に毎回必要になるガスケット類
・ダービーカバーシール
※ダービーカバーを開けてオイルを入れる場合に必要
ここからエンジンオイル交換の手順
①数分間暖機運転。エンジンをかけオイルを温める
②車体左側の中央下部にあるドレンプラグの場所を確認し、ウエス等で汚れを拭っておく。その際、ゴム系パーツが痛むのでパーツクリーナーは使わない。
ドレンプラグの場所は、2015年以前の車体は下に向いており、それ以降の車両は少し上のクリップに挟まれている
③オイル抜けをよくする為に、車体右側のシート脇にあるオイルフィラーキャップを開ける
④オイルパンを定位置にセットし、ドレンプラグを締めているホースクランプをマイナスドライバーを使い外す
⑤ドレンプラグを手でゆっくりと引き抜き、エンジンオイルを排出
ある程度排出できたらシートに跨って、車体を垂直にしたり軽く傾けたりしながらオイルを出し切る
⑥オイルが出きったら、ドレンプラグを元の状態に戻す。この時点ではまだホースバンドは取り付けしないこと。
※フィルターを交換しない場合は「⑬」の項目へ
オイルフィルターも同時に交換する場合は以下項目を参照
- ⑦オイルフィルターを反時計回りに回し緩める。その際、手で回るようであれば手で外す。固くて回らない場合は、オイルフィルターレンチを使用し緩める。
この時点では緩めるだけで、まだ外さないこと - ⑧ペットボトルをカットして作ったオイル受けをあてがいながら、フィルターを回して外す
- ⑨フィルターを外すとかなりの量のオイルが出てくるが、きっちり出尽くすまでペットボトルはそのまま。
ポタポタとオイルの垂れが止まったらペットボトルを外し、ウエスをあてがっておく。 - ⑩オイルフィルターを用意し、フィルター内にオイルを120ml注ぐ
- ⑪フィルターのパッキンに指でオイルを塗る
- ⑫オイルフィルターの取り付け。その際、フィルターレンチは使わず手で取り付ける。
※フィルターレンチで強く締め付けてしまうと、次回の交換時にフィルターを取り外せなくなる恐れがあるので、あくまで手で絞められる範囲で締めていく。
⑬ドレンプラグとフィルターがきっちり取り付けられていることを確認したら、オイルタンクの注入口からオイルを注ぐ
まずは、
・オイルのみの交換なら、1.5本入れる
・フィルターを交換したら、2本入れる
ここがポイント!
ドレンホース内の空気を抜く為に、ドレンプラグを一旦抜き、オイルが出てきたらすぐにプラグを差し込む。
その後、ホースクランプを取り付ける。クランプの締め付けトルクは、0.7~1.1Nm。
⑭オイルフィラーキャップを締めてエンジンを1,2分かけ、オイルをエンジン内に行き渡らせる
⑮エンジンを止めたらオイルを注ぎ足し、量の調整をする。車体をサイドスタンドをかけた斜めの状態にし、オイルフィラーのレベルゲージを確認しながら残りの分量を入れる。
レベルゲージ(目盛)の半分程度の量まで達したら完了
※2000年以前のスポーツスターの場合、ゲージ確認の際は車体を地面に対し垂直な状態にする。
決してサイドスタンドを掛けた斜めの状態で計測しないこと。←入れすぎの原因です
プライマリーオイルの交換方法
プライマリーオイルは、ダービーカバーから注入する方法と、インスペクションカバーから入れる方法の二通りあります。
ダービーカバーから入れる場合は、ジャッキを使って車体を垂直にしないと入れづらいので、今回は簡単なインスペクションカバーから注入する方法を解説します。
※サイドスタンドに台をかませて車体を垂直にする方法は、転倒の危険がある為おすすめしません。
バイクジャッキを使用して車体を垂直にしましょう。
①ダービーカバー下にあるドレンボルトと、インスペクションカバーの位置を確認し、周囲をボロ布でよく拭いておく。
②インスペクションカバーを締めている六角ボルトを外し、カバーとその奥にあるガスケットを外す。
2本の六角ボルトには小さなOリングが付いているので無くさないこと
③ドレンボルトをレンチを使い緩める。写真のようなレンチの角度の場合、右から左に回すとボルトが緩む。
④オイル受けをドレン下に配置し、手でボルトを外しオイルを排出する
⑤車体を少し揺らすなどしてプライマリーオイルが抜け切れるまで数分放置。その間にドレンボルトをパーツクリーナーで洗浄し、古いパッキン(Oリング)を外す。
ボルトにシールテープが巻かれていればしっかりと除去しておく。
⑥洗浄したドレンボルトに新品のOリングをはめ、ねじ山にシールテープを巻く
⑦オイル排出口をウエスで綺麗に拭いたら、ドレンボルトを取り付ける。
注意点として、このドレンボルトのOリングは、強く締め付けすぎると裂けてしまう性質があります。トルクの目安としては、鏡やスマホ撮影でボルトを確認した際に、Oリングがある程度潰れていたらOKです。
トルクを掛け過ぎない為にも、このドレンボルトはラチェットレンチやメガネレンチではなく、六角棒スパナで絞めたほうがいいでしょう。
⑧ドレンボルトを締めたらインスペクションカバーからオイルを注ぎ入れる。
その際、バイクパーツ用品店でもらえる使い捨てのオイルノズルがあると便利です。使い捨てオイルノズルがない場合は、ノズルの長いエーモンのジョウゴを用意する
⑩ボトル1本分入れたらインスペクションカバーを元の状態に戻す。その際、ガスケットに傷みがあれば新しいものに交換しておく
以上でオイル交換の手順解説を終わります
オイル交換をこうして文字で説明するとえらく長く感じますが、慣れてくればエンジンオイルとプライマリーオイルの両方で30分以内で完了出来ます。
エンジンオイル交換時の注意点は、フィルターの取り付け&取り外しです。固く締まりすぎているとレンチで緩める際になめてしまう場合があります。そうなると専用の工具が必要となってしまいます。
プライマリーオイル交換の注意点は、ドレンボルトの締め付けトルクです。取説上での推薦トルクは19~40Nmとなっていますが、40Nmだと強すぎてOリングがちぎれてしまうかもしれません。
一番いいのは、トルクレンチを使うよりも、鏡でボルトを見ながらパッキンがペチャっと少し潰れたくらいがベターです。
不明点や記述不備があればコメントからお願いします。
最後にもう一度、私のIronでも使用しているオイル等の必須消耗品リストをシェア
・エンジンオイル
ハーレー純正(スクリーミンイーグル) シンスリー 20W50
・プライマリーオイル
ハーレー純正 ヘビーシンセティック・ギアオイル (化学合成)
年式によるかもしれませんが、現行(すくなくとも2014年以降)のスポーツスターについてはエンジンオイルはサイドスタンドを立てた状態で測ります。サービスマニュアルにも明記されています。
一方、プライマリーオイルは車体を垂直に立てた状態で測ります。
お間違えなく。
コメントありがとうございます
スポーツスターは長らく車体を垂直にしてオイル油量を計る構造でしたが仕様が変わったのですね。
記事内容を修正いたします。
この度はご指摘いただきありがとうございました。
はじめまして。2018年式xl883nに乗ってます。先日オイル+フィルター交換をしたのですが、新しいオイルをゲージ下限辺りの量入れたのですが、アイドリング後にフィラーキャップを開けたところ、オイルが溢れそうになってしまいました。30分落ち着かせてもオイルレベルはほとんど下がりませんでした。なぜこのような現象が起こったのでしょう?また、対策があれば教えていただきたいです。
コメントありがとうございます!
オイルが溢れそうになりましたか、それは大変ですね。
原因はいろいろ考えられますが、すぐにお近くのハーレーショップに見てもらうことをお勧めします。
ハーレーのメンテナンスは一見簡単ですが、ひとつのミスで簡単にエンジンが壊れることがあるので気を付けて下さいね!